◆ 【翻訳】タルキール覇王譚のシールドデッキ構築
 
 Khans of Tarkir Sealed Deck
 
 By Reid Duke 2014年10月26日
 
 http://www.channelfireball.com/articles/khans-of-tarkir-sealed-deck/
 
 今ではやる機会が少なくなってしまったが、私のトーナメントプレイヤーとしてのルーツはシールド戦にあると思う。プロツアーに出るよりも前のことだが、せっせとマジックオンライン(MO)に励んでいた頃、シールドは一番楽しく、かつ得意なフォーマットだった。それがごく最近になって、また熱い気持ちが湧いてきたんだ。長いこと忘れていた気持ちをタルキール覇王譚が呼び覚ましてくれた。やはりシールドは最高だ。
 
 タルキール覇王譚のシールドは、あらゆる面にて深遠で、やりごたえがあってしかも面白い。どの色を使うか、一色をタッチで使うか、先手と後手のどちらを取るべきか、それにこれはジョン(Jon Finkel)と4ラウンド目の2ゲーム目でも起こったことだけど、5ターン目の変異をブロックすべきかスルーすべきか。数限りなく問いが生まれ、簡単に答えの出るものはほとんとない。
 
 今日のこの記事は、タルキール覇王譚のシールドについて考えるきっかけを提供できたらというのが目標だ。特に強さと色安定のバランスをいかに適正に保つかというところに重点を置いて話したい。タルキール覇王譚に限定して話すので、シールド全般のことならこちらを見てほしい。
 Sealed Deck   by Reid Duke (リンク先は英語)
 http://magic.wizards.com/en/articles/archive/lo/sealed-deck-2014-09-15
 

 タルキール覇王譚のシールドは、タルキール覇王譚*3のドラフトとどう異なるのか?
 
 どんなセットにも言えることだが、シールドとドラフトのデッキが最も異なる点として、デッキの焦点の定まり具合が挙げられる。ブースター・ドラフトでは、特定の一貫した戦略を意識して、それに合わせたピックを行うことが可能だ。シールドの場合、ドラフトの方針をそのまま転用するのは少し難しい。。
 
 デッキの焦点が定まりきらないせいで、タルキール覇王譚のシールドで特に顕著となることが2点ある。第一に、ゲーム展開がかなりゆっくりになるため、序盤に激しく攻勢に出ることで勝ちをもぎ取るのは非常に困難だ。ドラフトで強いデッキが組めた場合、3マナに到達して変異の出てくる前に、クリーチャーを1体でも2体でもとにかく並べ立てて、コンバットトリックで押し通したりテンポを奪ったりして、初動が変異の対戦相手を最後まで後手後手に押し込んでしまうことができる。シールドのゲームでそんな状況は作りにくい。初動が変異クリーチャーだったとしても、致命的なまでに押し負けることはほとんどない。後手のときですら、初動が変異クリーチャーだからといって、それが原因で押し負けることは少ない。
 
 第二に重要なのはマナ関連だ。ドラフトでは自分のやりたい色の土地を優先して集めることができるが、シールドでは運を天に任せるしかない。パックから都合よく土地が出るようお祈りするわけだが、毎回特定の氏族をサポートするように偏って出てくれるわけでもないし、プールの中で使いたいと思うカードに土地が合わせて出てくれる保証もない。むしろ色の組み合わせは、ばらばらでまとまりのないことの方が多いだろう。
 

 色を選ぶ

 タルキール覇王譚のドラフトでは、何ら問題なく2色のデッキを仕上げることが可能だが、シールドで2色のデッキにはお目にかかったことがない。というより個人的経験だが、綺麗な3色のデッキすらほとんど見たことがない。多くの人が4色目に手を伸ばすし、5色のデッキすら全く珍しくない。一般的に、色を足すときは切実な理由に駆られてのことが多いが、タルキール覇王譚のシールドでは、色を増やすことで咎められることはあまりない。特にゲームが低速化するシールド戦において顕著だ。
 
 《砂塵破/Duneblast》のような、ゲームを終わらせるだけの爆弾レアカードがプールにあったら、ほぼ使うのが大正義。強いられていると言ってもいい。かなり特殊な状況でもない限り、砂塵破を撃つというのは、ゲームに勝つのとほぼ同意義だ。終盤に使えればいいカードの場合、タッチ色の出るマナソースは3枚程度あれば十分といえる。シールドのプールだと大体、基本土地を全く使わなくても特定の色を出せるマナソースが3枚くらいはあるものだ。砂塵破を見たら最初に考えるのはアブザンだが、スゥルタイやマルドゥで組んで、必要な色をタッチするという使い方でも全く差し支えない。
 
 砂塵破は何が何でも絶対に使いたいカードの典型例だ。色シンボルが3色ともシングルシンボルで、終盤撃てれば良いカードであり、ゲームへの勝ちに直結する。このことは(砂塵破と比べると、ゲームに対する支配力はまちまちなものの)《火口の爪/Crater’s Claws》、《真面目な訪問者、ソリン/Sorin, Solemn Visitor》、《兜砕きのズルゴ/Zurgo Helmsmasher》、《飛鶴の技/Flying Crane Technique》、《サグのやっかいもの/Sagu Mauler》など、相当数のカードにも当てはまる。色安定要素が不運にも絶望的なまでに足りないとき以外、サイドボードにこういった一枚で勝てるカードを残さないようにしたい(とはいえ、マナ基盤に恵まれないのは実際に可能性としてあり得るので、そんな状況にも面食らわないよう心の準備をしておきたい)。
 

 ステップ1.爆弾レアはなるべく使うようにする。

 爆弾レアというのは、単体でゲーム結果を左右する可能性があるカードのことを指す。単純に軽くて使い勝手の良い呪文と混同しないようにしてほしい。《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》、《カマキリの乗り手/Mantis Rider》、《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost》といったカードの強さはいくら語っても語り尽くせないほどだが、《砂塵破/Duneblast》と同類ではない。死与えやカマキリの乗り手にもゲーム勝者を決定づけるくらいの力はあるが、それは序盤に引いてきて早くに唱えることができた場合に限られる。たとえばアナフェンザのために色をタッチしたとしても見返りは少ない。アナフェンザとて6~7ターン目までに唱えられなければ、代わりにコモンやアンコモンのクリーチャーを投入しているのと、あまり変わらないのだ。
 
 爆弾レアを検討した後は、優良除去と、安定したカードアドバンテージを稼げるカードを探そう。私の考えでは、タルキール覇王譚シールドにおいて、アドバンテージ源として一番優秀なコモンは《宝船の巡航/Treasure Cruise》と《苦々しい天啓/Bitter Revelation》だ。優良除去としては、《完全なる終わり/Utter End》、《アブザンの魔除け/Abzan Charm》、《弧状の稲妻/Arc Lightning》、《残忍な切断/Murderous Cut》、《死の投下/Dead Drop》、《死の激情/Death Frenzy》、《道極め/Master the Way》、《停止の場/Suspension Field》あたりだ。《騎乗追撃/Ride Down》や《凶暴な殴打/Savage Punch》も、然るべきデッキで使えば上のカードと並びうる性能が出せるだろう。《焼き払い/Burn Away》や《消耗する負傷/Debilitating Injury》、それにアブザン以外の魔除けは、中々強いながら真に優秀かと問われるとギリギリ含まれるか含まれないか、微妙なところだ。
 

 ステップ2.カードアドバンテージを取れるカードと除去はできるだけ使うようにする。

 さて、ステップ1・2と順に辿ってきていれば、色ごとにばらつきが出たりはするものの、選り分けた優良カードの束が目の前にできているはずだ。運が良ければ、使いたいカードの色は5色に散らばっておらず、わかりやすく特定の色に固まっているだろう。そこまでわかりやすいことは少なくても、3~4色に偏っていることはあるかもしれない。もしくは逆に、候補にあがらない色を切れる場合もあるだろう(たとえば爆弾レアがなくて、《弧状の稲妻/Arc Lightning》しかない赤、のような具合に)。
 
 次に頭の中で組み立てるべきなのが、デッキのマナ基盤だ。プールには戦旗が結構あると思うけど、戦旗は入っても1枚かせいぜい2枚だと思う。見るべきなのは土地だ。3色の出るトライランドは、3色中2色しか合っていなくても喜んで使うだろうから、まずデッキに入るとみていい。コモンの2色土地を見れば、どの色の組み合わせがやりやすく、タッチ可能な色にも見当がつくだろう。
 

 ステップ3.使いたい爆弾レアや優良カードとマナ供給源を突き合わせて検討する。特殊地形を見て、何が使えて何が使えないか、考えを整理する。

 ここからが重要で、我慢のしどころだ。しっかりと自制心を持とう。多くのプレイヤーが罠にかかるのがマナ基盤で、ここで躓くと致命的になりかねない。
 
 ステップ4.強レア・除去・アドバンテージ源を見たら、残りのカードは2色に寄せてデッキを構築する。

 2色の構築を金科玉条として死守する必要はないものの、2色に寄せるというのは指針として素晴らしいものだと思う。デッキができる限り2色になるよう、全プレイヤーが最善を尽くすべきといってもいいくらいだ。4~5色だからといって、全ての色の基本土地を入れるのは避けること。そんな真似をしたら、単純にマナ基盤がガタガタで安定を欠くものになってしまう。理想的な話をすれば、デッキの核は2色にキッチリ寄せてあるべきで、序盤はそのメイン2色のカードを使えるようにしておきたい。メイン2色がしっかりできて初めて、終盤唱えられればいい爆弾レアや優良カードをタッチすることを考える選択肢が生まれる。とはいえそれでも、色をタッチして使うカードは出来る限り少量に留めたい。
 
 タルキール覇王譚の場合、入れ替えても似たような役割を果たすことのできるカードが大半を占める。主に変異というメカニズムのおかげだけれど、他のカードが霞んでしまうくらい、ぶっ飛んだコモンやアンコモンが各色に無いせいでもある(つまり、《三つぞろいの霊魂/Triplicate Spirits》や《火炎放射/Cone of Flame》、《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant of Asphodel》といった連中のことだ)
 
 どんなクリーチャーを使うにしても、また使われるにしても、戦闘では相討ちが多くの場合基本となるだろう。もしくは爆弾レアを引くまで死なないようにするための肉壁のように考えてもいい。
 
 《必殺の一射/Kill Shot》、《大物潰し/Smite the Monstrous》、《矢の嵐/Arrow Storm》に《絞首/Throttle》といった、いつでも使いたいコモンの優良除去が環境には存在する。しかし、シールドではクリーチャーの密度を高く保つのが重要だ。絞首を使わず、代わりに平凡なクリーチャーを入れたからといって、そのせいで負けるようなことは普通起きない。
 
 とにかく基本となる2色を選ぼう。タルキール覇王譚では、大体対抗色の組み合わせになるだろう。選ぶときは、使用に堪えるカードの枚数を見て、それに絶対に使いたいカードを上手く組み込むことができるかを考え、マナ基盤と相談するのが肝要だ。《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》のような、軽くて超強力なカードが影響してくるのはこの段階だ。序盤展開するカードは基本となる2色のカードであるべきだし、基本土地はなるべくメイン2色のもののみを使うようにしたい。初手にはなるべく、基本2色の出るマナソースが欲しいからね。キープする際、メインカラーが初手で確保できているのなら、たとえタッチ色が出なくても安心してキープできるはずだ。
 
 ここでまた思い出してほしいのが、大概のカードは他のカードと交換しても、大勢に影響はないということだ。《雪花石の麒麟/Alabaster Kirin》、《高山の灰色熊/Alpine Grizzly》、《射手の胸壁/Archers’ Parapet》、《縁切られた先祖/Disowned Ancestor》、《氷河の忍び寄り/Glacial Stalker》、《跳躍の達人/Leaping Master》、《クルーマの盟族/Krumar Bond-Kin》、《僧院の群れ/Monastery Flock》、《塩路の巡回兵/Salt Road Patrol》、《山頂をうろつくもの/Summit Prowler》といったカードはデッキの屋台骨となる連中だが、ここで名をあげたカードはどれを使おうとも、他の何かより圧倒的に優れているとか劣っているということはない。マナが安定するように選択すればいいのだ。
 
 マナ基盤を構築する以降は後編にて

コメント

てふ
2014年10月29日11:15

翻訳お疲れ様です。とても参考になります。
僭越ながらリンクさせていただきました。

Taku
2014年10月31日23:46

> てふさん

コメントありがとうございます!私も訳していて参考になりました。
リンクお返ししますね。

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