◆ 【翻訳】イニストラードを覆う影 リミテッドレビュー 赤 (by LSV)
 
 Shadows over Innistrad Limited Set Review – Red
 
 Luis Scott-Vargas, 2016年3月31日
 
 http://www.channelfireball.com/articles/shadows-over-innistrad-limited-set-review-red/
 
 
《傲慢な新生子/Insolent Neonate》
 リミテッド1.5点
 1マナ1/1は戦力外と喧伝しまくる俺でも、悔しいがこいつはあまりに華麗な仕事人と認めざるを得ない。まずこいつは0マナのマッドネス要員で、早い段階で戦場に出ればちょっとダメージも稼げる。終盤引けば余った土地を新しいカードに変換してくれる(手札は減るけど)。1マナマニアを正気に戻すべく、例によって低評価をつけようと思ったんだが、今回は普通の点をつけた。マッドネスとか昂揚とか、特に攻めるデッキだとこいつを入れるべき場合は確かにある。
《ケッシグの鍛冶場主/Kessig Forgemaster》//《炎心の人狼/Flameheart Werewolf》
 リミテッド3.0点
 素のままでも2/1で戦闘しにくい能力付きだが、裏の3/2になったら能力まで更に厄介に。2点ダメージかなりやりにくい。攻めに守りにどっちでも優秀な能力だから2マナの価値は十分あるし、終盤裏になったら尚のことうまく処理するのが難しい。
《稲妻の斧/Lightning Axe》
 リミテッド4.0点
 初出の時のらせんにもマッドネスがあって存分に使い倒したけど、1マナの除去として使うことができて、おまけにマッドネスまで使うことができる。手札を捨てるコストも、マッドネスを捨てて思わず笑みがこぼれる。暇なときには6マナで撃てて文句なし。そうそう黙って流すカードじゃないよ。使用感としては《残忍な切断/Murderous Cut》に思ったよりずっと近い。
《狂気の預言者/Mad Prophet》
 リミテッド4.0点
 《無謀な識者/Reckless Scholar》をレビューした時も言ったけど、今回のルーターは相当高く評価すべき。あまりに点数が高いものだから、これを書いてる俺自身が狂気の預言者とか言われかねないかも。願わくば実プレイ後、やっぱり俺は狂気なんかじゃない、《礼儀正しい識者/Civilized Scholar》だったと思われたいね。普通のルーター能力、マッドネス、昂揚とあまりに色々なことができてしまう。こんなにルーターが強い環境はそうそうないと思うんだよね。
《溶岩の地割れ/Magmatic Chasm》
 リミテッド1.0点
 《溶岩の地割れ/Magmatic Chasm》がどれくらい有効かって?今撃てば勝てるなーという瞬間を数えてみればいいと思うよ。
 
 と言うとでも思ったか!唱えれば勝つ瞬間はあるが、それ以外の時は手札で腐るということを計算に入れないとダメだ。前のめりなデッキでは使うこともあるかもしれないけど、主な用途は盤面を固められたときの打開策としてサイドインすること。1枚くらいは簡単にとれるだろう。
《邪悪な囁き/Malevolent Whispers》
 リミテッド2.0もしくは3.5点
 溶岩の地割れと同じく、使える局面が限られるカードだが、強い局面ではとことん強い。攻めるデッキで使えば、ブロックに立っている4/4を奪って6点ダメージ、それに4/4のせいで殴れなかった奴らが雪崩れこんで相手を押しつぶす。これだけでも大変結構なお点前だが、もっと上手い使い方がある。
 
 このカードの真の強みはマッドネスにある。今回マッドネスに残されたデザインスペースを最も見事な形で活用したカードといっていいだろう。邪悪な囁きをインスタントタイミングでディスカードしてやれば、新たな世界が開ける。戦闘中に相手のクリーチャーを奪ってブロックすれば、+2/+0の修正も相まって複数のクリーチャーを始末が可能。ぶっ飛んだ戦果が期待できる。この性能を最大限に引き出すには、赤メインのマッドネスで攻めるデッキで使うのがいい。そうすれば、普通に反逆で道をこじ開ける方法でも、相手のターンの戦闘に奪う方法でも、十二分の性能を発揮することだろう。
 
 とまあ強いのは間違いないんだが、決して安定して強いカードというわけではないので、色があっても不要という場合も多い。でもうしかるべきデッキで使うば文句なしに強力なこと請け合いだよ。
《火の猟犬/Pyre Hound》
 リミテッド2.0もしくは3.5点
 1回大きくなってくれれば、マナレシオ的に優れたクリーチャーになる。できれば呪文満載のデッキで使いたい。インスタントとソーサリーが合わせて3~4枚程度だと、デッキに入らなくはない程度のクリーチャーに過ぎないが、インスタント・ソーサリーの割合を増やせば増やすだけ強くなる。合わせて8枚以上あれば、意識して集める価値が出てくると思う。
 
 個人的に、こいつがコモンで刷られたのがとても嬉しい。俺はこういう、デッキの中核になって、うまく組めたとき見返りの大きいカードが好きだ。こいつは壊れというほどではないけれど、是非仲良くしたいもんだね。この手のデッキを選ぶカードは強くないことも多いんだけど、もしかしたらめっちゃ強いかもしれないし。
《貪欲な求血者/Ravenous Bloodseeker》
 リミテッド3.0もしくは3.5点
 マッドネスデッキ以外では、小器用な2マナ域といった感じか。ブロック性能は良好だし、カードを捨てることになるとはいえ大概の奴と相討ちを取ることができる。まあ落胆させられることはないだろう。マッドネスだとか昂揚だとかに寄せたデッキでは、ほぼすべてのカードを引き立てる立役者になるだろう。マッドネスを使う上で、マナを使わずに手札を捨てられる手段は貴重だ。マナカーブを整える手段にもなるし、吸血鬼やマッドネスを使うとき是非欲しい1枚だ。
《灰と化す/Reduce to Ashes》
 リミテッド2.5点
 4マナと5マナでは使い勝手がかなり違うが、それでもピックしたらほぼデッキに入るレベルではあると思う。でも1枚取ったら、それ以降はかなり点数を下げるよ。追放するって部分もそれなりに役立つはず。《近野の司祭/Nearheath Chaplain》をこれで倒せたら、実績解除でシルバートロフィーくらい進呈してもいい。
《アドレナリン作用/Rush of Adrenaline》
 リミテッド1.5点
 前のめりなデッキでなら使えなくはないけどね。ダメージを通す手段としてはいいが、戦闘で一方的にやり込める手段としては、タフネス修正が物足りない。もうちょっとサイズ修正を上げてほしかった。あと、そうそう。これみたいな軽いコンバットトリックは、狼男デッキだと変身を解除してしまうことになりがちなので、狼男を中心にデッキを組む場合、少し評価を落とした方がいい。気をつけて。
《苛虐な魔道士/Sanguinary Mage》
 リミテッド2.5点
 2マナ1/3というだけで普通に採用できると思っている俺だが、個人的な好みを計算に入れなくても、こいつの実力は信用していい。相手どると戦闘中2/4になるくらいは警戒しなきゃいけないし、マッドネスデッキなら3/5になる可能性すらある。《ジェスカイの学徒/Jeskai Student》は当初の予想より大分できる奴だった。こいつもきっと学徒並に頑張るだろう。
《災いの狼/Scourge Wolf》
 リミテッド3.5点
 2/2先制攻撃は2マナ支払う価値が十分以上にある。ダブルシンボルだが、前回ゲートウォッチのときと違って、無色土地と色マナに頭を悩ます必要もなくなったしね。昂揚も達成できたらかなりの戦力。デッキにこいつがいるなら、アドレナリン作用も入れていいね。
《無差別な怒り/Senseless Rage》
 リミテッド1.0もしくは2.5点
 安直な強化目的でオーラをデッキに入れると、無差別な怒りを露わにする人っているよな。ただこいつは別。普通に前のめりなデッキだからという理由では微妙な性能だが、マッドネスで使えれば中々面白い。マッドネスしながら攻めるデッキを組むなら、修正が残る分、普通のコンバットトリックの代わりに1,2枚入れるといい仕事をしそうだ。
《罪を誘うもの/Sin Prodder》
 リミテッド3.5点
 構築で弱く、リミテッドで強い。《闇の腹心/Dark Confidant》を正反対にしたようなクリーチャーだね(リミテッドで《闇の腹心/Dark Confidant》を使ったことのある俺が言うんだから間違いない。鼻血が出るほどライフを失った)。こいつは3マナ3/2のサイズに、相手を地獄に誘い込む。確かに土地がめくれるとタダで叩き落とされるが、ライフはいずれ減っていき、ドローを止めるためのライフはいずれ尽きる。個人的には、相手にドローさせるくらいならライフが0点になるまで支払ってやるけどね。とにかく嫌な奴だよ。できれば赤い前のめりなデッキで使いたいが、別に攻めるデッキでも守るデッキでも使っていい。
《皮膚への侵入/Skin Invasion》//《皮膚から抜け出たもの/Skin Shedder》
 リミテッド2.0点
 優秀なブロッカーをそれなりに確保できていれば、大分使い勝手がいいと思う。前のめりなデッキでエンチャントされたクリーチャーに攻撃を強制させるって用途もあるけど、どっちかというと守るデッキで使う方がいいかな。小型クリーチャーを処理しつつ3/4を出せるのは中々悪くないし、序盤に抜け出てきたら3/4で盤面を支配できる可能性もあるだろう。困るのは後半引いて、貼ったクリーチャーを処理できない場合だ。困ったとき文字通り何もしないのが欠点だ。
《悪意ある動機/Spiteful Motives》
 リミテッド3.0点
 なんかやたらとオーラに瞬速がついてると思わない?往年のいわゆるインスタントメントがなんでこう持ち上げられてるのかわからないが、赤くて攻めるデッキに嬉しい一枚なのは間違いない。唱えて無事クリーチャーについたら戦闘では一方的に勝てるだろうし、盤面に対処しにくいクリーチャーが残る。たとえば2/2で攻撃して、相手の3/3や4/4に止められた際、これをつけたとしよう。なんと戦闘後、5/2先制攻撃が残るんだぜ。3.0点をつけるに十分。クリーチャーが少ないデッキなら入れないだろうが、それでも高得点をつけるべき強さがある。
 
 4~5ターン目に貼ればゲームが簡単になるかも。相討ちだと思ったものが一方的にやられ、おまけに相手の場に6/3先制攻撃が残るとなれば相当なものだよ。
《ステンシア仮面舞踏会/Stensia Masquerade》
 リミテッド1.0もしくは3.5点
 
 またまたインスタントで降臨するエンチャントだ。うまく着地させたら戦闘で一方を取る以外、どんな悪いことができるか見てみよう。
 
 仮面舞踏会で起きることは2つに1つ。相手の盤面を崩壊させるか、まったく何もしないかどっちかだ。攻める吸血鬼マッドネスデッキでは、戦略の上でこの上なく強力なカードよ。でも吸血鬼以外のデッキではゴミでしかない。《貪欲な求血者/Ravenous Bloodseeker》でこれを捨てられたら、戦闘で一方を取られた上、これが残るという最悪な状況に追い込まれることになるだろう。吸血鬼たっぷり(10体以上)、マッドネスも狙える構成なら、是非是非デッキに入れたい。そうでなければポイーでいいよ。
《構造のひずみ/Structural Distortion》
 リミテッド0.5点
 ひずみがあるのはマナコストの方だ。メイン採用などありえない。よほど許せないアーティファクトを見たら使うことがあるかもしれないとかなんとか。
《苦しめる声/Tormenting Voice》
 リミテッド3.0点
 フレイバー評価:A+ 完璧なフレーバー
 
 タルキール覇王譚と龍紀伝でお世話になったね。当時から普通に強かったけれど、今回は環境のおかげで相対的にかなり強化されている。まずメイン採用間違いなしだろう。マッドネスや昂揚との相性が素晴らしいし、何よりこのイラスト、このフレーバー、再録とはやはりこうでなくては。
《ウルリッチの同族/Ulrich’s Kindred》
 リミテッド3.0点
 緑マナがないと普通くらいの評価だが、2つ目の能力が起動できたら脅威そのもの。赤緑は攻撃寄りな色の組み合わせだし、狼や狼男の多い色だから、こちらのデッキに実際多いかは関係なく、相手からすると嫌なクリーチャーだ。
 
 ついつい能力を起動したくなるけど、起動しない方が正解ということもあるのを覚えておこう。相手がこちらの狼なり狼男をブロックした際、罠の可能性もある。4マナも使ってインスタントで処理されたら辛いものがある。見えているこの能力に向かって、不利になるような怪しいブロックをしてきたら気をつけた方がいい。どちらかというとこの能力は、実際に使うよりちらつかせてコトを有利に運ぶ方が使えるから、相手が見えてないかのような挙動をしてきたら、普通に解決させた方がいい時もあるよ。
《放たれた怒り/Uncaged Fury》
 リミテッド1.5点
 インスタントメントにコンバットトリックで隙を生じぬ2段構え。というわけでこちらは2段攻撃がつく。重たいから何枚も取るのは考え物。でもダメージ効率は気に入った。4/4に唱えれば実質6点ダメージが追加だから、ゲームを終わらせるにはもってこいだ。
《突沸の器/Vessel of Volatility》
 リミテッド0.0点
 解説が大変になるので、お願いだからこういうカードをデッキに入れるのはやめてほしい。確かに都合よく重量級をポンと出せることもあるだろうけど、大体はカード1枚分の価値なく終わるよ。
《村の伝書士/Village Messenger》//《月の出の侵入者/Moonrise Intruder》
 リミテッド1.0点
 《無謀な浮浪者/Reckless Waif》はあんまり好みじゃなかった。村の伝書士も同じ理由で好きになれない。表面の1/1バニラがあまりに弱くて、変身した後は1マナとしては強いものの、表の弱さを補えるほどじゃない。上手に組めた狼男デッキ以外じゃ用はない思う。狼男デッキでも正直どうだろうね。
《ヴォルダーレンの決闘者/Voldaren Duelist》
 リミテッド3.0点
 コントロールじゃお呼びでないから、この点数は攻撃面に絞っての評価だ。突然現れて、ブロック不能と速攻で6点以上のダメージをもぎ取っていく。安定はしないものの非常に強力だ。環境にこいつがいるせいで、安全策を取る際普段よりいっそう気を付ける必要がある。盤面が空でも慢心せず、数体は見張りを立てた方がいいな。
《悪魔の棲家の狼/Wolf of Devil’s Breach》
 リミテッド4.5点
 でかい!軽い!そして攻撃時の能力が美味い。ここまでデタラメだともう、捨てるカードはマッドネスかどうかとか気にしなくてもいいくらい。強力なレアってのはこういうやつだ。
 

 
 赤のコモントップ5
 1.《癇しゃく/Fiery Temper》
 2.《ヴォルダーレンの決闘者/Voldaren Duelist》
 3.《吠え群れの狼/Howlpack Wolf》
 4.《ガツタフの放火魔/Gatstaf Arsonists》
 5.《苦しめる声/Tormenting Voice》
 
 赤のコモンでは、癇しゃくが他を寄せ付けない文句なしの1位。対照的に2~5位はかなり似たり寄ったりだ。攻めるデッキなら、ヴォルダーレンの決闘者より強いコモンはないと思うが、殴らないなら決闘者は大分価値を落とすことになる。吠え群れの狼も、赤緑なら多少ブロックに回れるかもしれないが、決闘者と同じく攻めるデッキ用。どのコモンをどの順位に据えてピックするかは自分次第だから、マナカーブだけ気をつけよう。《苦しめる声/Tormenting Voice》もまた、デッキによって強さが変わる1枚だから、癇しゃくは別格としても、それ以外の全てより優先する可能性があるだろう。
 
 総括すると、赤は攻めるカードと、マッドネスパーツの2種類に寄っている。戦略は攻めるだけでもいいし、マッドネスだけでもいい。あるいは両方でもいいだろう。2つが相反しない以上、どちらかでしか使えないというカードが少なくて、今回赤は、デッキを組みやすい色なのかもね。

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